山本 瑤

黒き尊き魔女の結婚

黒き尊き魔女の結婚3

触れられないもの  川を越えて吹き付けてきた風が顔にあたる。草原を駆け抜ける二頭の馬の足取りはどちらも力強い。  フィリスは手綱を自在に操りながら草原を駆けた。アルカルドを乗せた黒馬も並走している。時々、目が合う度にフィリスはにこりと笑いか...
黒き尊き魔女の結婚

黒き尊き魔女の結婚2

こう見えて大食いなのです  フィリスは早朝に目覚めた。起き上がってすぐに隣を見たが、夫となった若き侯爵がそこで眠った気配はなかった。  がっかりしつつも、寝台から下り、自分で分厚いカーテンを開ける。ついでに窓も開けて外の空気を入れた。  外...
黒き尊き魔女の結婚

黒き尊き魔女の結婚1

せっかく嫁いできたけれど  信じられない。 わたしは、なんて幸運な娘なのだろう。  フィリスは祭壇の前に立ち、夢見心地で、隣に立つ自分の夫となる青年を見た。 彼、アルカルド・ヴァン・エントワーズは若き侯爵にして、つい最近までグランタール王国...