権藤頼子はやさしい手をしている

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さよなら、バイバイーーー泣かないでね。ちょっとはいいけど、たくさんは泣かないでね。大丈夫。きっとすぐにまた会えるから。 第四話 小川佳代の事情  朝起きると、しま子の姿は消えていた。 古民家は無駄に部屋数があって、頼子が寝起きしているのは、...
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新しい毛皮を着て大事な人のところへ戻りたい。情念にも似た猫のひたむきな愛。でも、もとの世界は容赦なく時間が流れていて、飼い主は……。 第三話 小川のしま子   猫は九生を生きるという。つまり、八回、生まれ変わるということだ。 生まれ変わる度...
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猫を愛し、その死を哀しみ、長く苦しむすべての人へ。彼らは九生を生きる。毛皮を着替え、あなたのもとに帰ってくる……子がいるとしたら。 第二話 田中有紗の事情  頼子が現在住んでいるのは、千葉県佐倉市である。  佐倉の歴史は古い。鎌倉時代から戦...
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―――愛をくれる存在は、同じくらい大きな喪失をもたらす――― 第一話 田中の小次郎   満ちゆく月が、夜半過ぎ、西の空に傾き始める時刻。裏庭の草を踏みしめる、湿った足音が近づいてくる。 足音には個体差があって、今夜の音は大きく、それなりの重...