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書き終えた大事な小説をどこに応募するのか

小説を書くということ

 小説を無事に書き終え、さあいよいよ応募するぞ! となった時、応募先は慎重に選んでいますか?
そもそも、特定の新人賞を想定して小説を書いたのなら、ミスマッチは起こりにくいでしょう。しかし時折、応募先をよく分かっていないまま、枚数や締切を優先して選んでしまう人がいます。

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自分の作品、受賞後の出版まで想定して応募してる?

 実はわたしも、投稿生活時代にやらかしたことがあります。400字詰原稿用紙で300枚を超える長編を書きあげ、プリントアウトして紐で綴じ、意気揚々、それを、ジャンル違いの新人賞に応募してしまったのです。
がっつりファンタジーもの恋愛色強めの少女小説を、男性読者の方が多いレーベルの新人賞に。

 この時、運良く二次選考まで残りました。そこで落選となったわけですが、とても親切な編集部で、「二次選考まで残った人には、希望であれば落選の理由や今後に向けてのアドバイスをする」ということだったのです。それも電話で。

 悩みました。え? メールならともかく、電話するの? 自分から電話して、まったく知らない人から、自分の作品についてダメ出ししてもらうの?

 こわい。落選したということは、ダメダメなところがいっぱいあるということなのに、それを電話越しに聞く。
メンタル豆腐なのに。立ち直れないほどひどいことを言われたらどうしよう。
申し訳ない。編集部の人って、ものすごく忙しいよね。めんどくさいヤツと思われたくない。

 かなり勇気が必要な案件でした。でも、勇気を出しました。こわいし恥ずかしいし申し訳ないけれど、これもチャンスだ。プロの編集さんの意見を直接聞くことができるなんて、なかなかない。

 現状から脱却したいなら、今までやろうとも思わなかったことをやろう。一歩を踏み出そう。

 ということで、しました、電話。
 とても優しい女性編集者さんでした。
 その方に言われたのです。
「第一に、媒体が違うと思いますよ。内容は良かったのですが、ウチでは出せないです。もったいないですよ。少し手直しして、他に再応募してみたらどうでしょう」

 実は、根がせっかちで、思い立ったら即行動、のような面がありました。初めて長編を書き上げたことに浮かれ、今すぐにこれで勝負したい、という気持ちにかられ、一番締切が近い新人賞に応募したのです。
もちろん、当時のわたしとて、それが「小説すばる新人賞」とか、「小説現代新人賞」向けではないことくらいは分かっていました。でも少年系レーベルだって、女性読者もいるし、いけるだろう、と思ってしまったのですね。

公募情報だけを調べて応募してしまっていないか

 自分が応募する先のレーベルが、どんな小説を出版しているか、くらいは調べるといいと思います。ここ数年、どんな作品が受賞しているのかも、知っておいた方がいいでしょう。
 わたしが投稿生活をしていた頃は、公募情報誌が書店で平積みで売られ、そこに掲載された情報だけで応募をする人が増えていました。現在では、さらに手軽にwebで情報を集められます。その手軽さを最大限利用しましょう。編集部のHPを見たり、出版されている作品を確認したり、気になる書籍は電子で読むことができますね。

 ぜひ、新人賞のデータ部分だけではなく、主催者のことも知った上で応募するようにしてみてください。

新人賞を受賞する。そこで終わりではなく、始まりとなる

 あなたが書き終えた作品は世界で唯一無二のものであり、我が子同然に愛しく尊い存在です。それを嫁に(もしくは婿に)送り出すのですから、嫁ぎ先については十分に吟味しましょう。応募前に限っていえば、選ぶのは相手側ではなく、自分です。あなたの素晴らしい作品を任せる相手について、あなたに選ぶ権利があるのです。
 自分が受賞しデビューするところまでイメージしましょう。そういうところでも、想像力を発揮させるのです。大丈夫。その妄想(笑)は著者の特権であり、誰かに知られることもない。

 その媒体で求められているジャンルで、引き出しがいくつもある方が、新人賞を受賞後の活動がスムーズです。当たり前ですが、受賞し、文庫化してもらって終わり、ではありません。「こんな物語を書けます」というプロットを出し続けていかなければならない。そのときに、「媒体が違った」となるとお互いに不幸なことになります。主催者側もそれを分かっていて、あまりにもジャンル違いの作品は落とすのです。
 応募先は、自分がデビュー後もそこで作品を発表し続けるということを前提に選びましょう。

 ちなみに前述した、二次選考で落ちた作品。コバルトでデビュー後、しばらくしてから、当時の担当さんに読んでもらったのですが、却下、でした。
面白くないですね。長いシナリオを読まされている気分でした


 つまり落ちた理由はレーベル違い、ジャンル違いだけではなかったということです(爆)。文章力、題材、舞台設定、人物構築、全体の構成力。どれもまったく足りていなかった。
 ただしこの頃には、メンタルは豆腐ではなく、コンニャクくらいには硬さを帯びていました。傷ついて、泣いて、わたしなんてどうせダメなの、もう書けない、となったらそこで終了なんです。
「分かりました。実はこっちにも別の引き出しがあって、中にこんなイイ感じのものが入ってますけど、どうでしょう」
と自分から引き出し半分くらい開けて、見せます。それもダメなら、さらに別の引き出しを。

 まあ、応募先が若干ミスマッチだったとしても、万人を驚かせるほどの傑作であれば、「よしうちで出してみようじゃないか!」となるのでしょうね。そして問答無用のパワーで売れてゆく。
 でもその可能性にかけるより、応募先を冷静な目で見極める方が、ずっと受賞に近づきます。
 なにより、唯一無二の自分の作品への、それが、当たり前の配慮と愛情というものでしょう。

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